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【書籍】科学的とはどういう意味か

たまたま手に入ったので読んでみた、ものの…

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書)

 

 

居酒屋でおっさんのボヤキを聞いている感覚。この話3回目だよ、の繰り返し。

 

科学の話になると「難しいことはいいから」と詳細をはしょって結果ばかりを求める文系人間にうんざりのご様子。この立腹感は、たとえば哲学者を引用する若者を見つけて「君は原典を読んだか」とのたまう文系の人と通ずるものがある。まずは自分で詳細を調べろと。

私は基本的に、原典はたどらないし、詳細は調べないことにしている。私は読んだり理解したりするのに時間がかかる方なので、原典を当たっていたらそれだけで精一杯で、モノを考える時間がなくなってしまう。

数学者が発見した式を工学者が活用するように、人には役割分担がある。原典や論理や道理を細かく考える人がいれば、それを端的に誰にでも分かりやすく翻訳する人がいて、またそれに基づいて新しいことを考え出す人がいる。人の一生は限られているので、そうやって分担しないと、みんなが全てのことにかかずらっていては何も先に進まない。だから報道番組があり、キュレーションメディアがある。

 

とはいっても、実際、人々の間で正しい科学的知識が根付いていないが故の被害や災害もある、ということはこの本で分かった。

であれば、問題は人々が科学に関心がないことではなく、考える人・翻訳する人・それを活用する人 のそれぞれのバランスや意思疎通が不適当であったことではないだろうか。専門家の知識が専門家だけのものになり、メディアは適切に専門知識を世間に届けられず、世間は「で、結局どうなの(どうにもならないんじゃないの)」と右往左往するだけ。

 

そういった問題点はこちらの本でも指摘されていたところ。

パラレルな知性 (犀の教室)

パラレルな知性 (犀の教室)

 

 

ただし、「科学は普遍性を保つためにある」というのは、なるほどであった。