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ho - jun

芳醇/豊潤 ・ 小説と漫画創作 ・ 本と映画レビュー ・ 初心者社会学

追っかけ

いまにして思えば、あまりにも若かった。
彼のことを好きすぎていたし、陶酔していたし、もはや信仰してもいた。
高校の日々はなにもかもが下らなく感じて、周りで起こっている友情や青春ごっこ、大人が植え付けようとする情熱や分別、誰もがこの年代にしか持ち得ないものを羨望するのに同時に一刻も早く捨てさせようとする、その感じとか雰囲気とかに憎悪に近い悪寒を感じていた。

ここに私の求めるものも、私を求めてくれるものもない。

そんな私が、彼に求めてしまうのも仕方ないことだった。

彼はインディーのギタリストで、まるで星みたいで、あの子とかあの時とかを歌っていた。
目は客席よりもずっと遠くをみてて、ギターの音は彼の目と同じくらいキラキラしていた。無意識の癖で力むと左目でウィンクをした。なんだかもう、光のかたまりみたいだった。

初めて見たときからハマって、ライブはぜんぶ最前列で見て、CDは「友達のぶん」と嘘をついて2枚ずつ買って、携帯のメモリはライブ写真でいっぱいになった。お小遣いを全てつぎ込み足りないぶん校則を無視してバイトをした。
今になって人に言うと「ばかじゃないの」と言われる。
「若かったから」
と返すし、実際そうで、若さ以外の何ものもそんな原動力になり得ない。

そんなに有名でもなかったから貴重なファンとして彼は待遇してくれたけど、多少の狂気じみたものは嗅ぎとられていたようで、こちらの勇気の一歩に対していつもむこうは一歩後ずさった。
彼はすぐお酒で潰れて、仲間たちに迷惑をかけた。お酒の飲めない私は、迷惑をかけてすらもらえなかった。
ほんとうは、私にだけ迷惑をかけてほしい。いや、仲間たちに囲まれて大好きな音楽をやる彼を邪魔したくない。でもその歌は私が一番知っていたい。いや、もっとたくさんの人に知ってほしい。相反する気持ちの間で私は肺が切り裂かれそうだった。

「大好きです」と伝えた。
あなたが、なのか、曲が、なのかは明言しなかったし、自分でもどちらかは分かっていなかった。
「きみいくつなの?」
「17歳です」
「そうかぁ。高校生?」
「3年生です」
すこし話し方が下手なところがまた、たまらない。
「じゃあ受験生だぁ。がんばって。おれみたいにならないよおにねえ」
酔っ払って言ったことでも、それは彼と私を決定的に遠ざける何かではありえた。でもその頃はそれにも気付かず、彼が初めて私という個に向けたメッセージに心酔して机に向かった。

大学に入ると、不思議とその頃の陰鬱とした満たされない感覚や、その矛先としての彼への情熱は脱げていた。

私が大学2年を終わる頃に、バンドは解散してソロになっていることを知った。
昔のCDをひっぱり出して、新しくできた彼氏の部屋で聞いたら、彼は
「いいね」
と言い、私は
「そうかな」
と言った。