旅するトナカイ

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サヨナラ博士

「なぜって私は、菜の花がすこぶる好きなのです。
あの、目の覚めるような鮮やかな黄色。
ひとつひとつの花は小さいけれど、それが集まってふんわりと丸く、背が高くでもどこか儚げな。
菜の花が咲くという、そのことに私は、何か特別な意味を感じずには居られない。」


博士の目は濡れて光っていた。
私は、辺り一面に菜の花が広がる場所を知っていた。今がちょうど、その季節だということも。
けれど私は、絶対に彼にその事は教えない、と思った。
それを見た途端、博士がどこか他の世界へ飛んでいってしまう気がしたのだ。