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時計じかけのオレンジ

時計じかけのオレンジ [DVD]

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これほど悪趣味ですばらしい映画はそう、ない。


本当ならば反吐が出るほどの主人公の不条理、暴力、強姦、悪戯、悪ふざけ。
そして更に不気味な更正処方――拘束具、ひんむかれた目、白衣と映画館。
その後には、「正しさ」を取り戻した主人公が逆の立場となって繰り返される、また暴力、暴力、怒り、憎悪、世のあらゆる汚らわしいもの…。


その醜さたるや、本来ならば1秒も目を当てられないほどなのに
この映画はどうしてこんなにも「美しい」のだろう。
近未来ポップなヴィジュアル、古くも新鮮な造語、クラシック音楽と映像の見事な社交ダンス。
3分の1ほど見たところで、ああこれはいい映画だ、結末がどうなったとしても、と思わせてしまうキューブリックは天才か。


なんせ主人公の表情やしぐさひとつひとつがいい味を出しすぎである。
口を歪めるニヤニヤ笑い、雨に唄えば、ぎょろっとした目。
最後、牛肉を食べさせてもらう時の人を馬鹿にしたクチャクチャ食い(あれこそCHEWING!)は愛嬌がありすぎてもう。(議員(だっけ?)役の人もよく笑わずにいられたものだ。)


そして音楽好きとしては、あの巨大なスピーカーは見ただけで興奮する代物なのであった。